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生成AIの著作権|商用利用で会社が訴えられないための実務

栗田 啓介株式会社MUKIAI 約10分で読めます
生成AIの著作権|商用利用で会社が訴えられないための実務

「生成AIで作った画像やキャッチコピーを、会社のチラシやホームページに使っていいのだろうか。あとから著作権侵害で訴えられたりしないか」。AIを業務に使い始めた中小企業の経営者から、いま静かに増えているのがこの不安です。

便利なのは分かった。でも、出てきたものをそのまま商売に使って、本当に大丈夫なのか——ここが分からないまま、なんとなく使い続けている会社は少なくありません。

先に結論をお伝えします。生成AIで作ったものを商用利用すること自体は、日本では原則として可能です。 問題になるのは「既存の作品にそっくりなものを、そのまま世に出してしまったとき」だけです。そして、その事故を防ぐ仕組みは、難しい法律論ではなく数個の社内ルールで9割は守れます。

この記事では、2026年6月時点の文化庁の考え方、訴えられるのはどんなときか、主要AIツールの規約と「もしものときの補償」の有無、そして会社を守る具体的なルールづくりまで、経営者の判断に必要なことだけをまとめます。法律の正確さで上回ることを意識して書いていますが、最終的な個別判断は弁護士など専門家への確認をおすすめします。

生成AIの著作権と商用利用を確認する経営者

生成AIの著作権はどうなる?まず押さえる2つの段階

最初に、いちばん誤解されている点をはっきりさせます。生成AIと著作権の話は、「AIに学習させる段階」と「AIが作ったものを使う段階」で、ルールがまったく別です。ここを混ぜて考えると、不安だけが大きくなります。

文化庁は2024年3月、文化審議会の小委員会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」を公表しました。これが現在の日本の実務上の基準になっています。難しい文書ですが、経営者が押さえるべきは2点だけです。

学習段階と利用段階は別ルール

ひとつ目は「AIが世の中の作品を学んで賢くなる段階」です。日本の著作権法(第30条の4)では、AIの開発・学習のためにデータを読み込むことは、原則として幅広く認められています。つまり、提供元がAIを学習させたこと自体を、利用者である会社が心配する必要は基本的にありません。

ふたつ目が、経営者にとって本題の「AIが作ったものを公開・販売する段階」です。ここは特別ルールではなく、人間がデザイナーに描いてもらった場合とまったく同じ著作権のルールが当てはまります。つまり「他人の作品に似ていれば、AI製でもアウト」ということです。

ポイント:心配すべきは「学習」ではなく「使う段階」。出てきたものが既存作品に似ていないか、ここだけを管理すればよい。

AIが作ったものに著作権はあるのか

もうひとつ経営者が知っておくべきなのが、「AIで作ったものに、自社の著作権はつくのか」という点です。文化庁の考え方では、おおまかに次のように整理されています。

作り方 著作権
AIにボタンひとつで丸ごと自動生成させた 著作権は発生しない可能性が高い
人間が指示・選択・加筆など創作的に関与した 著作権が発生する可能性がある

ここが地味に重要です。ボタン一発で出しただけの画像は「誰のものでもない」状態になりやすく、他社にそっくり真似されても止めにくいのです。自社のロゴやブランド素材を生成AIで作る場合は、人間が手を入れて仕上げる前提で考えるのが安全です。

学習段階は気にしなくてよい、利用段階だけ管理する——この線引きができれば、次の「では具体的に何がアウトなのか」が理解しやすくなります。

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商用利用で著作権侵害になるのはどんなときか

ここが本記事の核心です。結論を先に言います。生成AIの商用利用が著作権侵害になるのは、「既存の作品に似ている(類似性)」かつ「その作品をもとにしている(依拠性)」の両方がそろったときだけです。逆に言えば、この2つを避ければ、商用利用は基本的に問題になりません。

侵害を分ける2つの条件

著作権侵害かどうかは、昔から次の2つで判断されます。AI製かどうかは関係ありません。

  1. 類似性:既存の作品と、表現が具体的に似ているか
  2. 依拠性:その既存の作品をもとに(参考にして)作られたか

大事なのは、アイデアや作風(テイスト)が似ているだけでは侵害にはならないという点です。「アニメ風の絵」「ミニマルなデザイン」といった作風そのものは、誰でも使えます。保護されるのは、特定のキャラクターの顔・服装・ポーズといった「具体的な表現」です。

たとえば「人気キャラクターそっくりのマスコットを作って」とAIに頼み、そのまま商品パッケージに使えばアウトです。一方で「親しみやすい動物のキャラクターを作って」で出てきたオリジナルなら、基本的に問題ありません。差は「特定の誰かの表現に寄せたかどうか」です。

AI特有の落とし穴:知らずに似てしまう

ここがAIならではの、そして経営者がいちばん知っておくべき落とし穴です。利用者が元ネタをまったく知らなくても、著作権侵害と判断されることがあります。

文化庁の考え方では、AIが学習データの中にその作品を取り込んでいた場合、利用者がその作品を知らなくても「客観的にアクセスがあった」とみなされ、似たものが出てきたら「依拠性あり」と推認されうるとされています。

つまり「自分はパクっていない、AIが勝手に出した」という言い訳は通用しないということです。だからこそ、出てきたものをそのまま使わず、人間が『これ、どこかで見た作品に似ていないか』を確認する工程が決定的に重要になります。

ポイント:侵害は「似ている×もとにしている」でアウト。AIは知らずに似せてくることがあるので、公開前の人間チェックが最大の防御になる。

この「人間チェック」を仕組みとして定着させられるかどうかが、安全に使える会社とそうでない会社の分かれ目です。では、ツール側はどこまで守ってくれるのでしょうか。

主要AIツールの商用利用ルールと「補償」の有無

経営者が次に気にするのは「結局どのツールなら安心して商売に使えるのか」です。ここで知っておくべきキーワードが「補償(ほしょう)」です。これは、もしAIの生成物が原因で著作権侵害で訴えられたとき、提供元が防衛費用などを肩代わりしてくれる制度のことです。法人向けの一部プランで用意されています。

主要ツールの状況を、2026年6月時点で分かる範囲でまとめます(各社の規約は頻繁に変わるため、契約前に必ず提供元の最新ページで確認してください)。

ツール 生成物の商用利用 入力データの学習 著作権の補償(法人向け)
ChatGPT(OpenAI) 可。生成物の権利は利用者側 無料・個人版は既定でON、設定でOFF可。法人版は学習しない Enterprise等で対応
Claude(Anthropic) 既定で学習しない Enterpriseで著作権補償あり
Gemini(Google) 法人版(Workspace)は学習しない 商用向けに一定の知財保護を提供
Microsoft Copilot 法人向けは商用データ保護あり 法人有料に著作権訴訟への補償あり

表から読み取るべき経営判断は3つです。

  • 無料版・個人版を仕事で使うのは避ける:入力した社内情報が学習に使われる設定になっていることがあり、情報漏洩と表裏一体です。仕事で使うなら法人向け有料プランが原則です。
  • 本気で商用コンテンツを量産するなら「補償あり」のプランを選ぶ:万一のときに会社単独で訴訟リスクを背負わずに済みます。
  • 規約は年に数回変わる:各社とも年2〜4回ほど規約を更新しています。「契約時に確認したから大丈夫」ではなく、定期的に見直す前提を持ってください。

補償があるからといって「何を作っても訴えられない」わけではありません。多くの補償には「提供元のフィルター機能を有効にしている」「規約を守っている」などの条件がつきます。あくまで万一の保険であり、土台は次の社内ルールです。

ツール選びだけで安心を買えるわけではない、という前提を踏まえて、最後に「会社として何を仕組み化すべきか」を見ていきます。なお、自社にどのツールと体制が合うかを整理したい場合は、AI伴走支援の詳細で導入設計から一緒に組み立てています。

社内で著作権ルールを話し合うチーム

自社のコンテンツとブランドを守る側の話

著作権の話は「他人の権利を侵害しないか」だけではありません。自社が生成AIで作ったものを、どう守るかという攻めの視点も経営には必要です。

前述のとおり、ボタン一発でAIに丸ごと作らせた素材は、自社に著作権が認められにくく、他社に真似されても止めにくいという弱点があります。これを踏まえた実務上の対策は次の通りです。

  • ブランドの核になる素材(ロゴ・キャラクター・主要ビジュアル)は、AIをたたき台にしつつ人間が仕上げる。創作的な関与を残すことで、権利を主張しやすくなります。
  • 重要な素材は商標登録など別の制度で守る。著作権が弱くても、商標で守れる範囲があります。
  • 外注先がAIで納品物を作る場合の取り扱いを契約で決めておく。「AIをどこまで使ってよいか」「侵害があったときの責任は誰か」を発注時に明記します。

ここは法務・税務と同じく個別性が高い領域です。ブランド価値が大きい素材ほど、提供元の規約確認と専門家への相談を組み合わせることをおすすめします。

守りと攻めの両方を踏まえたうえで、では明日から会社で何をすればよいのか。最後に具体的な手順に落とします。

会社が訴えられないための社内ルールと進め方

ここまでの内容を、経営者が明日から指示できる5つの仕組みにまとめます。難しい法律知識は不要です。この5つを社内ルールとして決めるだけで、事故の大半は防げます。

  1. 「そっくりに作って」を禁止する:特定の作品・キャラクター・実在の人物・他社ロゴに似せる指示を社内で禁止します。これだけで依拠性のリスクが大きく下がります。
  2. 公開前の人間チェックを必須にする:AIの生成物をそのまま公開・販売しない。「どこかで見た作品に似ていないか」を担当者が確認してから世に出す工程を入れます。
  3. 仕事では法人向け有料プランだけを使う:無料版・個人版の業務利用を禁止し、学習・漏洩リスクを断ちます。商用が多い部署は補償ありプランを選びます。
  4. 作った記録を残す:いつ・どのツールで・どんな指示で作ったかをログに残します。万一のとき「もとにしていない」ことを示す材料になります。
  5. 規約と運用を定期点検する:年1〜2回、各ツールの最新規約とルールの運用状況を見直します。

ポイント:難しい法律論より、「似せない・人がチェックする・有料版を使う・記録を残す」の4つを徹底するほうが、現場では何倍も効く。

この5つを口頭の注意で終わらせず、A4一枚の社内ガイドラインに落として全社員に配るのがコツです。私たちの伴走支援でも、まずこのガイドラインづくりから着手し、著作権・情報漏洩・禁止事項を1枚にまとめて配布する形を標準にしています。社内ルールの整備とあわせて自社のリスクを点検したい方は、3分AIリスクチェックも入口として使えます。

なお、こうしたルールを「作って終わり」にせず、業務フローやチェック体制として仕組みに組み込むところまでやり切ると、現場が安心して使える状態になります。仕組み化や自動化まで踏み込みたい場合はClaude Code実装支援のような形で、確認工程そのものを業務に組み込む支援も行っています。

まとめ|恐れるより、仕組みで守る

最後に、この記事の要点を3つに絞ります。

  • 生成AIの商用利用は原則OK。 訴えられるのは「既存作品に似ている×それをもとにしている」の両方がそろったときだけです。
  • AIは知らずに似せてくることがある。 だからこそ、公開前に人間が「似ていないか」を確認する工程が最大の防御になります。
  • 守りは仕組みで作れる。 似せる指示の禁止・人間チェック・法人有料プラン・記録の保管。この4つを社内ルールにすれば、事故の大半は防げます。

生成AIの著作権は、正しく理解すれば過度に恐れる必要はありません。一方で、何も決めずに現場任せにすると、いつか事故が起きます。大切なのは、社員が安心して使える「会社としてのルール」を先に整えることです。

なお、本記事は2026年6月時点の公表情報(文化庁の考え方や各社の規約)にもとづいています。制度や規約は更新されるため、最新の内容は提供元の公式ページで、個別の法的判断は弁護士などの専門家でご確認ください。自社の場合のルールづくりや体制整備を相談したい方は、お気軽にどうぞ。

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